ガンチャと柿≪九月二十三日≫ -壱-眠れない!眠れない!・・・眠れない!眠れない!!!!!のだ。 身体中が痒くて、どうしようもないのだ。 ”こういう時は、変に眠ろうとせずに、朝まで起きているつもりでいればいいのだ!”と自分に言い聞かせて、パッつと跳ね起きた。 どのくらい、起きていたのか? 30分?いや、一時間?? ドアをノックする音で目を覚ました。 どうやら、痒みも眠気には勝てなかったようで、いつの間にか眠ってしまっていたようである。 サービス係り「グッド・モーニング!ティ-はいらないかい??」 俺 「グッドモーニング!イエス!サンキュー!」 ベッドの上でモーニング・ティ-を飲む。 暫くベッドの上で、ボンヤリした後、ホテルを出る事にした。 現地のお金が乏しくなってきたのだ。 近くのバンクで両替を済ませる。 US5$≒45Rp レートが非情に悪い。 と言っても、闇屋はすぐには見つからない。 いるときにいない、いらない時に纏わり着いてくるのが、闇屋。 銀行を出ると、近くにあるバス会社を訪れ、Kabul(カブール)までのチケットを購入する事にした。 俺 「エクスキューズミー!ワンチケット、to Kabul!」 受付「・・・・・・・」 俺 「出発はいつですか?」 受付「・・・七時。」 俺 「明日のAM七時ですね!サンキュー!」 ペシャワール~カブール間のチケット代、23.00Rp(780円)を支払った。 とりあえず、チケットを手に入れたことで、一安心。 今日の仕事はこれで終わり。 そう思うと、また痒みがぶり返してきた。 もう少し落ち着いていたい街なのだが、南京虫のお陰で一日も早くこの街を去りたい気分なのだ。 ビスケットとコーラ(4.1Rp≒140円)を買って、部屋に戻ると暫くして宿の使用人がやって来た。 使用人「やあー!元気かい!!」 一度目は、金をせびりに来たようだが、タバコを二本やって追い返したのだが、二度目は、ガンチャ(麻薬)をもってまたやって来た。 使用人「やー!これ買わないか??」 俺 「いくらだ?」 使用人「5Rp(170円)だ!」 そういうと、自分で美味そうにガンチャを吸い出して、煙をモウモウと出す始末。 俺 「1.5Rp(50円)だったら買ってもいいよ。」 使用人「5Rpだ。」 俺 「1.5Rpだ。嫌ならもって帰ればいいじゃない。俺は毛唐と違って、どうしても吸いたいというものでもないんだからな。そのまま持って帰れば・・・・。」 そういうと、仕方ないとでもいうように言った。 使用人「・・・・1.5RpでOKだ!」 ガンチャを俺に渡し、1.5Rpをもって出て行った。 勝手に入ってきて、商売をして出て行く。 この使用人がまだいい人で、あくどい使用人なら、ガンチャを売っておいて警察に密告して、報奨金を受け取る奴もいると聞くから注意しなくてはいけない。 まあ、自分で吸う分には許されているようなので安心はしている。 ここパキスタンに入って、鼻にオデキはできるし、やっと治ったと思ったら、南 京虫の大群に襲われる始末。 ろくな事はない!! あ~~~あ! 早く、アテネに行きて~~~~な! これ、今の俺の精神状態なのだ。 * 昼食・・・と言っても、リンゴ・ジュースだけ。 それでも・・・何か食べなくては!と外へ出るが、まるで食い物屋が見つからない。 ここの人たちは、いったい何を食っているんだろう?? 果物と言っても、新鮮なものはほとんど見つけられない状態だ。 ブラブラ歩いていると、店で柿らしきものを見つける。 懐かしいではないか。 太陽の陽射しに晒されているから、果物もたまったものではない。 ほとんどが、水分を吸い取られているようで、萎んでしまっている果物が並べられている。 果物の上に氷を置いている店を一軒見つけた。 他の店で果物を買おうとは思わないのだが、地元の人は安ければいいのだろうか。 氷をのせて、鮮度を保とうとしている店はまれである。 果物の周りには、蝿は飛び回っているし、おまけに蜂まで飛んでやがる。 それでも、店のおっさんは知らん顔。 午後から、体の痒みも次第に治まって来たようだが、まだ一部は痒みが続いている。 こんな時は唄でも唄って、本を開く。 最近良く口ずさむ歌がこれ。 ♪♪ 貴方に サヨナラって 言えるのは 今日だけ 明日になって またあなたの あたたかい手に 触れられたら きっと 言えなくなってしまう そんな気がして・・・・・ 私には 鏡に写った あなたの姿を見つけられずに 私の 目の前にあった 幸せに すがりついて しまった・・・・・・・ * 午後5時に目を覚まして、六時にホテルを出る。 もう外は暗い。 このホテル、”Mehfis”の目の前にレストランがあり、夜暗くなると開店する。 一日に一度、このレストランで充実感に浸っている。 チキン・カレーにチキン・ライス、フライド・エッグにティ-とこれでもか・・・・と注文する。 チキン・カレーとチキン・ライス、どちらも日本と違い、普通のカレーとライスにチキンを焼いたものを乗せているだけのも。 それが、ここで食べるから・・・・・美味いのなんのって!!! お腹一杯食って、17.5Rp(600円)。 レストランを出る頃には、昼間の人込みが嘘のようにひっそりとしている。 この街を始めて訪れた時のように、し~~~~~~ん!と静まりかえっている。 ホテルの下でコーラを買うと1Rp(34円)、ホテルの中で買うと1.5Rp(50円)。 近くの子供が俺の方を見て、”バクシ~~~シ!”と言って笑っている。 何か欲しいのかと思っていると、違っていた。 この俺に”恵んでやる!”といって、笑っているのである。 * 三ヶ月はノー・ビザのパキスタン。 アフガニスタンへの入国手続きとビザの取得(アフガニスタンはビザが必要なのだ。しかし、一ヶ月以内なら簡単に取得する事ができる。)・・・そして、アフガニスタンへのバスのチケットさえ手に入れることができれば、ここパキスタンでもゆっくりできるというものである。 そのパキスタンも相次ぐ南京虫の襲来で、出発が早くなってしまった。 明日発つつもりだ。 すぐ出発できるように、荷物をまとめる。 今、午後8時30分。 日本でなら、さしずめTVのプロ野球に見入っている頃だろうが、ここパキスタンときたらベッドに横たわり、部屋の外の人の話し声を聞き、ヘンテコリンな音楽が流れるラジオに耳を傾け、時を刻む時計の音や前の道を時々走る車のクラクションが、時折耳に入ってくるだけである。 秋の夜長、手足の痒みがまだ酷い。 夜になると、痒みが再現してくる。 身体が温まって来るからだろうか・・・・。 えらい所へ来たもんだ。 ? 「トントン!」 ドアを叩く音が聞こえてきた。 ホテルのマネージャーが入ってきた。 マネージャー「元気ですか?日本人ですね。」 俺 「それがどうした?(日本語で)」 マネージャーには、日本語はわかっていない。 マネージャー「日本語少しわかります!」 俺 「?????(絶句)」 マネージャー「アリガトウ、サヨナラ、コンニチワ。」 俺 「ウ~~~~~~ン、良いねー!」 マネージャー「ワタシ、日本の兵士達と戦った事があります。東南アジアでです。日本人素晴らしく強かった。パキスタン人も強かったけど、日本人はもっと強かった。」 俺 「・・・・それは良かった。」 マネージャー「ワタシは、今でも街の警備兵をしています。そして、一日に1回銃を持って、実際に撃つ訓練をしています。」 それだけを話すと、タバコを二本取って部屋を出て行くのだ。 あいつはいったい何のために来たのだ。 タバコをせびりに来ただけなのだ。 マネージャー「グッ・ナイト!」 ニッコリ!笑う事も忘れない。 たいした役者ぶりである。 * ≪中近東よ!俺は行く!お前がどういう形で俺を迎えようとも。≫ 旅に出て、二ヶ月間の記録はこれでお終い。 後、中近東の部、ギリシャの部、ヨーロッパの部、イギリスの部、そして日本へ帰国するまでの部と記録は続くのである。 いや!続けるつもりでいる。 いきて帰れれば・・・・・の話である。 いよいよ、この旅の最難関であるアフガニスタン・イランへと旅は続いて行く。 請う御期待!! 生きて帰れることを祈っておいて下さい。 それでは!! ジャンル別一覧
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